陰謀が渦巻く

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重役フロアーの前の秘書課、唯奈ちゃん、何も言わずにスタスタと素通りして、社長室に向かおうとした。 「アポはお取りですか?」 エルメスのスーツをスマートに着こなした、ストレートの長い髪の少しきつめな美人秘書が、唯奈ちゃんの前に、現れた。 「アポはいらないでしょ。社長の婚約者が社長に用事があって会いに行くんだから」 唯奈ちゃんが、そう言うと、きつめの美人秘書が、わたしの方を見て、睨んできた。 「婚約者?ああ、遺産相続のための婚約者でしょ。結婚して、遺産相続が済んだら、すぐに離婚されてお払い箱行きの。とっとと結婚して離婚されたらいいのに。社長も暇じゃないのよ」 きつめの美人秘書の言葉が、胸にぐさりと刺さる。 わたし自身、蓮社長がわたしに対して、誠意を見せてくれて、求愛をしてくれても、結婚したい理由が遺産相続のためだから、どうしても、信じられないでいた。
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