「バカと天才は紙一重」ってのは、バカにもなれない凡人の遠吠え

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「大体、なんでお前がキレてんだよ。お前はいつもそうだ。人の案に文句ばっかつけやがって。」 トオルの様子が変わった。語気は強くなったが、目の奥が無邪気に笑っている。 「文句言うなら、てめぇも案の1つや2つ出したらどうなんだよ!」 中3の夏が、センターマイクと客席が、じわじわと蘇ってきた。 「お前がふざけた案ばっか出してくるからだろ!お前、本気でバアちゃんに禁煙してもらう気ねぇだろ!」 トオルは、嬉しそうに頷いた。 「俺ほどバアちゃんの事を気遣ってる孫はいねぇよ!こないだだって誕生日にお洒落な灰皿プレゼントしたんだぞ?」 「余計バコバコ吸っちまうだろうが!バアちゃん殺す気か!」 「うるせぇ、バーカ!」 「誰がバカだバーカ!」 「バカって言った方がバカだぞバーカ!」 「最初にバカって言ったのはお前だからお前の方がバカだバーカ!」 「バカ!」「バーカ!」「バカバカバカ!」 「バカ!バーカ!」…… 罵り合いながら、変わらないこいつを応援してやることが敵わない俺ができる唯一の事かもしれない、なんて考えていた。 「……なぁ、もうバカって言うの、やめねぇか?」 「ああ、もう一生分はバカって言ったな。」 「…………俺さ、やっぱバアちゃんの気持ちに寄り添えてなかった。もっとバアちゃんの気持ちを知る努力をしようと思う。」 「いいことじゃねぇか。」 「だからさ、俺もタバコ始めることにするわ。」 「いやお前未成年じゃねぇか!もういいよ!」 最後のツッコミが決まったあと、俺とトオルは満足気に座り込んだ。そうしてしばらく、星空を眺めていた。
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