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「……へ?」
間抜けな声が出た。ツラはさらに間抜けだったに違いない。
「お笑いって、あのお笑い?」
「他に何があるんだよ。」
「お前が?俺と組むの?」
「そうだよ。2回も同じ事言わすな。」
間抜けなやりとりをしながら、俺はようやくにトオルの言葉の意味を咀嚼し始めた。
お笑い?トオルが?確かに面白い奴だしワードセンスもあるとは思うけど……つかプロになるのか?マジで?色々大丈夫か?食っていけるのか?やっぱ上京するのか?えーと何から聞こう……
「でもやっぱ、お笑い芸人って安定しない仕事だと思うんだ、だからさ……」
俺が言い終わる前に、トオルは大口を開けて笑った。
「違げぇよ、そういう事じゃなくて、文化祭の出し物な!三年生が毎年やるやつ!」
耳まで熱くなるのを感じた。夜でよかった。
日が出ている時間だったらびっくりするほど真っ赤っかな俺の顔があらわになっていただろう。
「あー、ね、そうだよね、そりゃ、そうだよね」
「プロにでもなる気だったのかよお前」
「そ、そんなことねぇし」
「ぜってぇそうだったろ。ま、いいけど。
漫才やろうと思ってんだけど、どう?」
「お、いいよ。」
「軽いな。」
後になってみれば、この頼みもまぁまぁなもんだと気づくのだが、「プロのお笑い芸人を共に目指したい」というスーパーヘビー級な頼み(そもそも俺の勘違いだが)からのギャップで、あっさり返事してしまった。
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