思春期の90%は勘違いによって構成されています

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文化祭まであと3週間となった、ある日。 今夜もネタ合わせだ。だが俺もいい加減、どの辺が「ネタ」で一体何を「合わせ」ているのか、分からなくなってきていた。 その日も5分遅れでトオルは現れた。 「これ、読んどいて。」 トオルが俺に手渡したのは、ルーズリーフが数枚入ったクリアファイルだった。まさか、と思い中身を確認する。取り出したルーズリーフに整然と書かれていたのは、この数ヶ月の俺たちのやりとりを元に、漫才として成立するように再構成して書き起こしたものだった。紛れもない「ネタ帳」だ。 「いつの間にこんなもんを……」 ネタの内容はこうだ。60過ぎてタバコを吸い始めたトオルのばあちゃん。トオルはバアちゃんの身体を気遣い、なんとかタバコをやめさせたい。その為の方法をトオルがいくつか持ち込んできたのだが、その内容が、タバコの先に爆竹を仕込んでおく、ココアシガレットを大量に贈る、家中の棒状のものをタバコに変えてタバコに嫌気が差すようにさせる、など素っ頓狂なものばかりで俺が憤慨する。そのまま罵倒合戦になるも白熱し過ぎて小学生並みの罵り合いになってふと二人とも我に返り、最終的に「バアちゃんの気持ちを知る為に、俺もタバコ吸ってみるわ」「いやお前未成年じゃねぇか!」で終わる、というものだった。 終始ニヤニヤしながら読み終えた。横のトオルを見遣ると、夜空を見上げながら何やら思索に耽っているようだった。俺は相方を誇りに思うと同時に、余計すぎる心配をしていた自分が恥ずかしくなった。俺がただただ無駄話をしていると思っていたあの時間に、トオルはパターンを試し、トークを投げかけ、ネタを練っていたのだ。 俺がちょっと申し訳なさそうな視線を投げかけていたことには気づかぬまま、トオルが口を開いた。 「なぁ、コンビ名どうする?」 微塵も考えてなかった。さらに申し訳なくなった。
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