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 ある日、獅子堂翔馬は多々良駅にやって来た。館林の隣にある駅だ。駅周辺を散策することにした。 国道122号 栃木県道・群馬県道148号御厨多々良停車場線 群馬県道371号多々良停車場線 館林多々良郵便局 足利市立愛宕台中学校 群馬県立多々良沼公園 群馬県立館林美術館 彫刻の小径 ビバホーム館林店 館林市立第八小学校 館林市立多々良中学校などがある。  インフルエンザだろうか?翔馬はひどい席をしていた。具合が悪いところを老婆に助けられた。連れられてきた武家屋敷みたいなところは、絶えずいがみ合い反目し合っている5人の子供達が住む古邸緑川家。ある夜、その緑川家で2人の娘が何者かによって銃撃される。この事件を皮切りに、一家の皆殺しを企てる姿なき殺人者が跳梁する。  緑川美和子と、緑川美沙子だ。  金があまりない獅子堂にとって1泊100円の緑川荘は夢のような宿だった。  談話室に駒野宏太、田宮太一、千草千夏、鶴川月子、小谷香美、緑川光子、そして獅子堂翔馬の7人が集まった。  千草千夏、鶴川月子、小谷香美の3人は光子の実の娘、美和子が長女、美沙子は次女。千夏は三女、月子は四女、香美は末っ子だ。渡る世間は鬼ばかりみたく 、夫や子供とケンカして帰郷していた。駒野と田宮は客だ。会社の同僚だって話だ。 「具合は大丈夫かい?」  光子が尋ねた。  「バファリンのお陰もあって熱も下がりました」  駒野と田宮はガソリンスタンドで働いているらしい。  110番しようと、光子はズボンのポケットからスマホを取ろうとした。 「あれ、ない」  「何やってんのよ?」  険しい口調で千夏が言った。  が、千夏のスマホもなかった。  獅子堂は電車に忘れてきてしまった。  他の人間のスマホもなくなっていた。 「魔法使いでもいるんかな?」  ゴマ塩の駒野が言った。 「電話線を切るとか、そーゆー方法ならミステリー小説でよく見るけど?」  バーコード頭の田宮がリモコンでテレビをつけた。サスペンスドラマをやってた。血塗れの死体が温泉に浮かんでる。川村青葉主演だ。 「死体とか嫌いだ」と、田宮がリモコンの電源ボタンを押した。  大して楽しい人生じゃないが、死ぬのは嫌だ。獅子堂は逃げようと玄関に向かった。 『逃げたら殺す』  獅子堂は幻聴かと思ったが、田宮が「殺されちまうぞ」と言ったので精神はそこまで悪くなってないと安心した。  
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