百の想いを繋げて…《透視点》

6/6

30人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「忘れられないし、忘れないですよ。俺は五年前から今まで、あなたに片想いです。長い長い片想いですけど、そんな簡単に諦めるような男なら、あなただって好きにはなってくれなかった。そうでしょう万琴さん」 「バカ…!」 万琴さんも俺に腕を回して抱き締め返してくれた。 何だか前より華奢になったな…。 強く抱き締めたら、腰から折れちゃうかもしれない。 それでも、万琴さんの温もりは心地よくて、凄く安心して泣きそうになる。 そこで改めて気付くんだ。 俺はやっぱり万琴さんが好きなんだって。 腕は回したまま、少しだけ身体を離してお互いに見つめて笑った。 そう二人とも困ったような笑顔で。 「透、何泣いてるの?」 「万琴さんだって」 五年も遠回りしたけど、その想いはたった百という数字では足りない。 もし想いという器があって、その最上限が百だとすると、俺はその器を壊すほどの想いを注ぐだろう。 きっと今からなら、二人で歩き出せる。 もうあなたの手は離さないから…。 そう心に誓うと、俺はもう一度、強く万琴さんを抱き締めた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加