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「忘れられないし、忘れないですよ。俺は五年前から今まで、あなたに片想いです。長い長い片想いですけど、そんな簡単に諦めるような男なら、あなただって好きにはなってくれなかった。そうでしょう万琴さん」
「バカ…!」
万琴さんも俺に腕を回して抱き締め返してくれた。
何だか前より華奢になったな…。
強く抱き締めたら、腰から折れちゃうかもしれない。
それでも、万琴さんの温もりは心地よくて、凄く安心して泣きそうになる。
そこで改めて気付くんだ。
俺はやっぱり万琴さんが好きなんだって。
腕は回したまま、少しだけ身体を離してお互いに見つめて笑った。
そう二人とも困ったような笑顔で。
「透、何泣いてるの?」
「万琴さんだって」
五年も遠回りしたけど、その想いはたった百という数字では足りない。
もし想いという器があって、その最上限が百だとすると、俺はその器を壊すほどの想いを注ぐだろう。
きっと今からなら、二人で歩き出せる。
もうあなたの手は離さないから…。
そう心に誓うと、俺はもう一度、強く万琴さんを抱き締めた。
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