30人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
何も考えずにインターホンを押す。
逢いたいということだけで頭がいっぱいで、指はインターホンを押していた。
『はい、どちら様ですか?』
最初に聞いた時と同じような優しくて柔らかい声。
「あ、東西運送です!お届けものです!」
『少しお待ちくださいね』
適当な嘘ついちゃったけど、これくらいしか思い付かなかった。
万琴さんの足音が聞こえて、ドキドキが最高潮に達して、心臓が破裂するんじゃないかと思うくらい痛くて、五年前はこんなことなかったのにと、自分の漫画みたいな純情っぷりに呆れてしまう。
「お待たせしてごめんなさ……透?」
「五年越しのお届けものです」
あ、万琴さん、髪切ったんだ…。
ショートカットの万琴さんも可愛くて、これはこれでアリだな。
「……あの受け取り拒否でお願いします」
「返品不可ですし、受け取り拒否はできないシステムになっています」
そう言って、万琴さんを別れた日と同じように抱き締める。
万琴さんは抱き締めて返してくれなかったけど、きっと混乱しているんだろうな。
「ダメだよ、帰って…。もう透は普通の幸せと普通の生活に変わったんだから…。僕のことは忘れてよ」
最初のコメントを投稿しよう!