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私が出会ったのは桜の真下で散っていく桜を少し悲しそうな表情で桜を見上げていた同級生の男の子だった。
私は思わず声を掛けてしまった。
「どうしたの? 何か、悲しいの?」
私の言葉に驚いたのか彼は勢いよく振り向いた。そして、私の姿を認識するとまた桜を見上げボソリと呟いた。
「……ただ、散る桜が美しいと思って」
正直変なやつに絡んでしまったと思った。けれと、何となく彼の気持ちもわかる。散っていく様がとても綺麗な桜だけど……散るのを見るのは物悲しい。
周りのうるさい同級生とは少し違う彼の雰囲気は桜ととてもあっていた。
本当はそこで立ち去るべきだったのだろうけど私は何となくその場に留まり再度彼に声をかけた。
「……あ、あの。貴方もここの新入生……だよ ね? 私は白野優衣。A組……なんだけど貴方は?」
私の質問に一瞬目を丸くしたがすぐに彼は答えてくれた。
「……僕は、及川……泰司。B組」
「じゃあ、隣のクラスだね! よろしく!」
これが、彼、泰司との最初の接触だった。
それから桜が散るまでの間、彼は毎日そこに佇んでいた。
見かける度に彼に話しかけた。
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