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「弓枝は売れっ子のエスコートサービスだったが、それは仮の顔だ。弓枝は『ボーダレス』のメンバーとして任務を遂行した。いつから?君の年齢以上だよ。そして君という起爆剤を孕むのが弓枝の役割だったのさ!」 「嘘だ!嘘だ!俺は信じない。じゃあ聞くけど俺の存在が『ボーダレス』にとって大事なら一人にしないで閉じ込めるはずだ」 「それも考えたが君は抑えつけようとすれば反発して言うことを聞かないらしいな。自由だと思っているのは君だけなんだよ。つねに見張りが付いていたし、職場もマークしている。今日、電話番号は誰に貰った?」 「……そ、それは」 「刑事が来たタイミングで都合よく火事が起こるか?」 「……。」 「オリジンとのハーフは君だけではない。αならオリジンと対等の立場を要求するだろう。βはどう立ち回るかじっくり考える。Ωはどうだ?人間の欲は金とセックス。それに恥がセットになれば最高の手札になる」 「言っている意味がわからない」 「君の部屋にはカメラが仕込んである」 「え!どういうことだ!」 「ヒートの時期は大変だろう。男を引っ張り込んで腰を振っている映像がたんまりある。お前の息子はとんだ淫乱だと見せてやるのさ。αとβ以上の働きをするのがΩ、すなわち君のことだ。あははは!」  隆俊はこみあげてくる吐き気を必死で抑えつけた。ここでぶちまけるくらいなら死んだほうがましだ。牧野の高笑いを聞きながらテーブルの端を握る両手に力を込めた。すべて夢であることを願って。
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