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「滝田隆俊はオリジンとβの混合種だ」 「しかもΩ。支配階級の子供が最下層とは皮肉なものですね」 「父親は警察組織のトップの一人だ。滝田弓枝の捜査記録を見て昔の接触を思い出した。DNAデータベースで自分と滝田隆俊のものを比較したところ親子関係が認められた」  国民全員のDNAがデータベース化されている。警察幹部なら照合するのは簡単だろう。 「滝田弓枝がどのようにして妊娠したのかは不明。オリジン以外と事に及ぶなら厳重な手立てをしていたはずだが今それを論じている場合ではない。 今回は捜査ではなく……『マンハント(人間狩り)』だ」 「なんですって?この若い男に罪はありません」 「ああ、まったくだ。存在が罪ということだろう。追跡してくれ。連行する必要はない」 「どういうことですか?」 「ヒットせよという命令だ」  ゆるい下半身の責任を何も知らない人間に償わせる気なのか?しかも息子を。反吐がでる。 「支配階級であるオリジン(起源種)が他種と交わって子を成した。漏れれば社会の根幹から崩れる。オメガバース3種の暴動や『ボーダレス』の活動活発化により日本は混乱するだろう。日本だけではない。『ボーダレス』のグローバル化はもはや懸念ではなく事実。起爆剤は未然に処理しなければならんのだ。一人の命でそれが防げるのなら安いものだ。そう判断された」 「一人の命?先ほど滝田弓枝はかなり儲けたと言いましたね。滝田隆俊と同様のハーフが複数存在しているのではありませんか?滝田弓枝以外にも同様の役割の人間がいるはずです」 「そのような懸念は我々の範疇外である。現状では滝田隆俊のみ存在している。これが「最新」の見解だ」 「断る選択肢は?」 「君にはない。そして君同様、私にもない」  次長はフォルダに写真を戻しロウに渡すために持ち上げた。 「すぐ取り掛かってくれ」  ロウに選択肢はなかった。
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