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中村遊子
「なんだ、やるのか?!」
廊下にまで響く怒鳴り声。また始まった。そう思って、私は教室へ向かって駆け出す。
教室では太陽が北里くんの襟元を掴んで睨んでいる。周りのクラスメイトは誰も気にしていない。このくらいの喧嘩は、今月だけでもう100回目だ。もう、みんな慣れてしまった。
「二人とも、やめてよ!」
私は出せる限りの声で叫ぶ。大好きな二人には仲良くしてほしいのに、なんでいつも喧嘩ばかりするのだろう。
二人のもとへ歩き、太陽の手に触れる。そのまま、じっと太陽の目を見る。なんで、私の気持ちをわかってくれないのだろう。
太陽が一瞬北里くんを見たあとに、チッと舌打ちをすると乱暴に北里くんを離す。北里くんが床に放り出されたので、慌てて彼の隣にしゃがむ。
北里くんの無事を確かめると、非難の意味を込めて太陽を睨みつけた。太陽はそんな私を見て、また舌打ちをすると教室を出ていく。
「ごめんね。太陽、本当は優しいんだけど…。」
北里くんに太陽のかわりに謝った。北里くんはジッと私を見て、大丈夫と一言言って立ち上がる。
北里くんはこんなにも優しいのに、太陽はなんでいつも喧嘩ばかりするのだろう。
お昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
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