並木道へ

1/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

並木道へ

『着いたよ』  超短いメッセージを送ると、俺はシートベルトを外して伸びをした。  ちらほらと車の横を通り過ぎるのは、この道に面して建つ高校、俺の母校の生徒サン達。  何人も同じ制服を見過ごすと、一人の少年が助手席のドアの前に立った。  俺はロックを解除してそいつを招き入れた。 「いいなぁ大学生はまだ夏休みで」  シートベルトを着けながら文句をたれる森也(しんや)は、俺にとって友達以上な少年だ。  昨年まで同じ写真部に所属していて、こいつのほうが先に俺になついてきた。  写真を撮りに行くと言うと、『助手をする』と言って必ずついてきて。  今日だって写真を撮るための助手として助手席に座っている。 「今日はどこ行くの?」  走り出した車、森也が無邪気に()いてくる。 「街に行く。定禅寺通りの並木撮ろうと思ってさ」  街に向かう車、カーステレオをつけていない車内は静かで。  普段は森也との会話でうるさいくらいなのに、急に森也が静かになった。 「なんかしたか?」  一瞬前はふつうだったよなぁ?  不思議に思って(たず)ねる。 「……」  無言。 「なにか考えゴトか?」 「ん」  森也はたまに黙り込むことがある。     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!