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並木道へ
『着いたよ』
超短いメッセージを送ると、俺はシートベルトを外して伸びをした。
ちらほらと車の横を通り過ぎるのは、この道に面して建つ高校、俺の母校の生徒サン達。
何人も同じ制服を見過ごすと、一人の少年が助手席のドアの前に立った。
俺はロックを解除してそいつを招き入れた。
「いいなぁ大学生はまだ夏休みで」
シートベルトを着けながら文句をたれる森也は、俺にとって友達以上な少年だ。
昨年まで同じ写真部に所属していて、こいつのほうが先に俺になついてきた。
写真を撮りに行くと言うと、『助手をする』と言って必ずついてきて。
今日だって写真を撮るための助手として助手席に座っている。
「今日はどこ行くの?」
走り出した車、森也が無邪気に訊いてくる。
「街に行く。定禅寺通りの並木撮ろうと思ってさ」
街に向かう車、カーステレオをつけていない車内は静かで。
普段は森也との会話でうるさいくらいなのに、急に森也が静かになった。
「なんかしたか?」
一瞬前はふつうだったよなぁ?
不思議に思って訊ねる。
「……」
無言。
「なにか考えゴトか?」
「ん」
森也はたまに黙り込むことがある。
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