並木道へ

2/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 大抵は、すねている時だ。  今もすねてるんだろうか。  街に写真を撮りに行くと言っただけでなぜすねる?  考え込む俺。  街がいけないのか?  静かな所に行きたかったのか?  定禅寺通りは道路の真ん中が遊歩道で、並木が延々と続いているから公園みたいなモンなんだけどな。  定禅寺通りがいけないのか?  あ、もしや。 「まさか、『裸婦像』が気に入らないのか?」  定禅寺通りで写真と言うと、恐らく誰もが遊歩道に立つ裸婦像と欅並木を撮る。  裸婦像、俺が女を撮りに行くからこいつはすねているのか? 「……うん」  不満げに返事をする森也。  俺は、無性にこいつをかわいらしく思った。 「あのな、裸婦像は撮るけど、俺は裸婦には興味ないぞ?」  笑っちゃう。  美術的には興味はあるが、性的にはなにも感じないよ、俺は。  いや、普通ああいう銅像に欲情しないだろ。 「俺が一番、興味あるのは森也だよ」 「……」  俺の言葉に再び黙り込んだ森也に、内心微笑みながら言葉を重ねる。 「森也のその変なかわいさ、今、絶好調に興味あるね」 「変な、ってなんだよ!?」  すねた顔から一転、軽く怒り混じりに言い返してくる。     
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!