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ささやくような声が、熱を帯びていた。ミアは鼓動がさらに激しくなる。
「抱きたい」
「無理です!」
即座に答えたが、シルファはミアの真っ赤になった顔を見て、浅く笑う。
「聞こえない」
端正な顔を傾けて、シルファがミアの首筋に口づけた。ミアは「ぎゃ!」と色気のない声をあげる。
「せ、聖なる夜は、大人しく過ごす日なんじゃないの?」
「まだ前日だな」
シルファに喰われそうになりながら、ミアは室内の飾り時計を見て抗議する。
「もう当日になるのも、時間の問題だよ」
腕から逃れようと、ミアはぐっとシルファのたくましい胸板を押し戻す。
「わ!」
逃れようとするミアの力を受け流すように、シルファが姿勢を変えた。突っぱねていた腕が行き場を失う。勢いを殺しきれず、ミアはたやすく寝台に倒れこんだ。
起き上がろうとすると、シルファの手が容赦なくミアの肩を抑え込む。
「ちょっと待って!」
「待てない」
寝台にミアを押し倒して、じっとこちらを見下ろしているシルファの目が赤く光っていた。血のような真紅に染まった瞳。欲情に染められた証には、迷いのない欲望が滲んでいる。
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