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自分には特別な力などないと訴えると、シルファは労わるような眼差しで微笑んだ。
――特別なことは必要ない。ただ、傍にいてくれるだけで構わない。
召喚された当時は、シルファの研究室を兼ねた王宮の離れにいたが、約束を交わしてから数日後には、ミアはシルファと王宮を出た。それからは、彼の仕事について転々と住処を変えている。
呪術対策局は国家犯罪対策庁の外部機関だが、なぜか王の直轄となっている。
シルファ曰く、国家の名目を守るための、お飾り的な部署だという話だ。
マスティア王国は、王家の始祖がヴァンパイアであるという伝承を持っている。その流れを組んで、人ならざる者――いわゆる魔女や魔力の存在を肯定する風潮があった。
シルファが魔術や魔力の研究者ではあり、自分を召喚した経緯から、ミアは当初マスティア王国は魔法が当たり前の世界だと勘違いしていた。
けれど、シルファの仕事を見ていると、どうやらそうではないらしい。
魔力と魔術の研究をしているが、彼自身はミアが魔法と感じるような超常的な現象を信じているわけではない。
この国にはヴァンパイアも魔女もいない。いるはずがない。魔術も魔力もない。というのが、彼の持論だった。
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