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ミアが固まっていると、ふっとシルファが悪戯っぽく笑った。
「白の書の規範は自然と共に生きる、だろ。男女の営みはとても自然な行為だと思うけど」
「屁理屈!?」
「そうでもない。今夜は同じようなカップルが山のようにいるだろうな」
シルファが嘘を言っているとも思えない。ミアは返す言葉を失ってしまう。見上げるシルファの赤い瞳が、吸い込まれそうなほど綺麗だった。
彼の長い指が、ミアの唇をなぞるように触れる。
思いつめた声が、もう一度欲望を打ち明けた。
「抱きたい」
「……うん」
ゆっくりと、シルファの柔らかな銀髪が落ちかかってくる。唇を重ねると、すぐに甘さに翻弄された。
ミアはしがみつくようにシルファの背中に腕を伸ばす。素直に受け入れると、心地の良い体温と鼓動が重なった。彼の動きに合わせて寝台が軋んでいる。体に伝わる掌の熱が熱い。与えられる想いに、ひたすら溺れる。
「ミア……」
「ん」
シルファの想いが、からだ中に刻まれていく。胸がいっぱいになって、視界が淡く滲んだ。
聖なる夜。
胸の内で、ささやかな幸せをたしかめる日。
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