私として生き続ける

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   愉快な友人たちのお陰で、孤独に苛まれることはなかった。けれど、流石にこれから先は、何か楽しみや目標がなければ寂しい。  やりたかったこと、何があったか。  そういえば、留学したかった。ドイツに行きたかったけれど、所属していた学生団体で責任者になってしまった。留学を理由に断ることも出来たけど、先輩方から託された手前、無下にも出来なかった。結局、引退後すぐに就職活動もあって、留学は自然と諦めた。  夢は声優だった。アニメが大好きで。ただ、親に完全否定されてしまった。「人の為にならない仕事をするな」と。医療に携わる父と、公務員だった母。大人になってからは親心だと理解出来たが、当時の私は、人格否定されたくらいの気持ちになっていた。    他には…何だろうか。  老後、この施設にずっといる自分を振り返って、あぁ、と思い至った。  
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