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――そうだ、忘れてはいけない約束があった。
いつもの連中――学生の頃からの友人たち。特に、後輩達とはよくつるんだ。気付けば八十年ものの付き合いだ。100歳を迎えず亡くなった者もいるが、幸い、一番よくつるんでいた友人たちは、まだ生きている。
伴侶を喪った私の元に、彼らは代わる代わる訪れてくれた。碌に家事も出来ない私の世話を焼いたり、泊まり込んで傍にいてくれたり、桜が綺麗だの紅葉が美しいからだのと言って家から連れ出してくれた。
飽きもせず、毎年、誕生日も祝ってくれた。今晩も来るらしい。物好きな連中だ。
その内の一人が言っていた。
あれは、私の91の誕生日。向こうも90の爺のくせに、何故か元気に酒を飲んで酔っ払いながら、
「先輩!100歳まで頑張ったら、またみんなで若い姿に戻って、学生の頃みたいに馬鹿騒ぎしましょ。俺、200歳まで先輩の誕生日祝いたい」
――やりたいことがあるか無いかとか、未練以前に。
そうか。待っている約束があるんだった。
私はまだ、死ねそうにないらしい。
若槻さんは、一つ大きく頷いて、
「言い忘れていました。改めて――お誕生日おめでとうございます」
そうにこやかに祝ってくれた。
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