100の問い

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僕はよく、堅物とか、鉄仮面とか、冷血漢とか。そんな風に言われる事がある。 そんなんだから女にモテたことはそんなにない。それが、なんでか椎名先生のドストライクだったらしい。 僕は数学担当で椎名先生は音楽担当。趣味が合うとも思えないから、出会って数時間後にされた告白をきっぱりと断ったんだ。それが今から約1年前の話。 この1年、僕はとてつもない猛アタックの被害に遭っている。 きっぱりと断った次の日、目の色を変え再び同じ告白をしてきた彼女は、僕が何度滅多打ちに断ろうともゾンビのように起き上がり、次の日に再び同じ言葉を吐くのであった。 「好きです!付き合ってください。」 耳にタコができるほど聞いた。もはや聞きたくない。 最初こそ言葉のみの可愛らしい告白だったのだが、それは徐々に変化し、タネを変え品を変え日々変わって行った。だが、言う言葉は「好きです!付き合ってください。」なのだ。 この言葉以外に言葉を知らないのかと不安になるほど同じ言葉ばかりを並べて言うのだ。 ある時、僕のデスクに一本の缶コーヒーが置いてあった。僕好みのブラック無糖。誰かの差し入れだと思い、飲もうとした。 プルタブを開けようと手を伸ばした瞬間に、うっすらと見えた文字。何事かと目を凝らして見てみると、 缶の淵にびっしりと「好きです!付き合ってください。これ飲んだら付き合ってくださいね!」と文字が書いてあったのだ。…なんとも器用な。そして、恐ろしい事をするもんだと呆れたものだ。 それ以降、誰からかわからないものには一切手をつけず、やり過ごしてきた。
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