千字小説訓練 3rd Apr 2019

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危険を回避するマシンを買った。 後ろから車が来ていたら僕の足は自然と歩道の脇へ寄る。 電車のホームのヘリには近づけない。 通行人とはぶつかることなく、自分で意識せずとも勝手によけていく。 公園の中からこちらへ野球のボールが飛んできたが、僕の頭上を飛び越していった。 グラスを落としてしまったが、足元にいた猫に当たって割れなかった。 学校の屋上は本格的に立ち入り禁止になった。 近所の見通しの悪い交差点に、新たにミラーが設置された。 長い間放置されていた、ぐらぐらする階段の手すりは、先日ようやく改修された。 雪の日にも絶対に滑らない靴を母が買ってきた。 水分の多い食材でも油のはねない天ぷら粉も買ってきた。 台風16号は、西日本を通過するまでに勢力を弱め消えてしまった。 活火山であった松濤山が、その活動を止め死火山になったと気象庁が発表した。 工事中のビルから落ちてきた鉄骨は、折しも吹き荒んだ突風によって僕の体をそれた。 新宿駅の爆破テロは設置段階で看破され、未遂に終わった。 ノストラダムスの予言は外れた。 今さっき入ったニュースによると、地球方向を目指して進んできていた小惑星「オコナー」は急にその軌道を変化させ、我々にとっては安全な角度で飛び去って行くそうだ。 僕は今日も、集中して、本を読みながら歩き登校する。
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