百万人のかくれんぼ

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「そんなことじゃないかと思ったんです。いいですか、おふたりがこの街で暮らす百万の人々の運命を握っているんですよ」  役人が面倒くさそうに話したところによると、現在世界中の街で同時にかくれんぼがおこなわれているという。各街には選ばれた男女一人ずつの鬼がいて、隠れた住人を探しているのだそうだ。なぜそんなことをしているのかといえば、人口を減らすためだという。世界中のえらい人たちが集まってこの時期に決めたのだそうだ。鬼に見つけられた人は強制的に人間処理センター送りとなるらしい。  人口の増加は都市にとって深刻な問題だ。医療の進歩は人間を病で減らさなくなってしまった。出生率が多少下がったところで人間の増える勢いは止まらない。このままでは人類は深刻な食糧不足に襲われる。特に街で暮らす人間は食料を生みだすこともなく消費してばかりいる。  そこで世界の偉い人たちは街に暮らす人間の数を減らすことにしたのである。誰もが知っている遊びの要素を取り入れ、運と工夫しだいでは力に関係なく生き延びられる方法としてかくれんぼを採用したのであった。 「そういうわけで頑張って探してください。後五日後までに既定の人数探せない場合はあなたがたお二人にも人間処理センターへ行っていただくことになりますのでご注意ください。その気になれば隠れている人くらいすぐに見つかりますから」 「規定の人数って何人ですか」 「それは教えられません。おふたりの捜索意欲を削ぐ可能性がありますから」
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