ちぃちゃん

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「ちーぃちゃん!」  みどりの原っぱで、ぼうぼうの雑草をかきわけ、向かった先は、あの場所。お家から道路をはさんだ先の、森ヶ谷公園の、すべり台のついた遊具の──下!  …………いない。いつもならここなのに。あいつ学習しやがったな。じゃあどこにいるの?  とりあえず近くの遊具の下を覗いてみたけど……いない。もう1時間くらい探しているし、そろそろ帰らないと、まみ、お母さんに怒られちゃうから、はやく見つけたいのに……。 「ちぃちゃーん! ちぃちゃーん! ……どこだろ」  試しに呼んではみるけど、当然返事はないので、またまた公園中を探しまわるはめに。  どこだったらいるかなあ。あ、今度は森の近くに行ってみよっ。あそこは虫が多いから嫌なんだけど、ちぃちゃんなら行きかねない。たぶんあそこだ。けど、ここからちょっと遠いなあ。まあ、がんばるか。はやく帰りたいし。  あたりを見回しながら森を目指して、てくてく進んでいると、白い変な、大きな箱があった。その下からは、小さな足がふたつ、ちょこんと並んでいる。たしかあの箱は…………そうだ、百葉箱!学校でこのまえ習ったばかりのあのやつだ。学校にもあるやつ。あんなとこにいたんだ。 「ちぃちゃんみーっけ!」 まみはちぃちゃんに飛びかかった。そしてぎゅーってする。 「まみまみ! いらっしゃい」  いらっしゃい、ってここはちぃちゃんのお家か。 「みつかったからちぃちゃんの負けね」 「え? なんのこと?」  ええ……さっきまでかくれんぼしてたじゃん…………。まみがひとり衝撃を受けていると、 「それよりさあ。見てよー」  そう言いながらしゃがみこむと、ちぃちゃんは百葉箱の下を覗きだした。 「何見てるの?」  あれ、あれ、と、ちぃちゃんが指差すその先には、ぽつんぽつんときれいに砂が凹んで、いくつか並んでいた。
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