6985人が本棚に入れています
本棚に追加
スタッフルームのドアを開けると、中からああでもないこうでもないと言い合いをする声が聞こえてくる。
「おはよう。二人とも早いね。何揉めてるの」
デスクに頭を寄せ合う二人の背中に、私はクスクスと笑いながら声を掛けた。
同時に振り向いたのは、後輩プランナーの佐野ちゃんと、若手営業マンの鳥飼くん。
眉間に皺を寄せた佐野ちゃんに対して、鳥飼くんは困ったように眉を下げている。
こちらも何かと対照的な二人は、相変わらずそりが合わないみたいだ。
「原田さん! あれ……小野寺さんもご一緒ですか? おはようございます」
「原田さん、小野寺さんっ! おはよーございます! ちょ、聞いてくださいよ~……」
鳥飼くんが矢継ぎ早に説明してくるところによると、どうやら今日ご来館予定の新規のお客様を、誰にどうやって割り振るかで一揉めしていたらしい。
なんせ今日は、グランマリアージュ迎賓館のリニューアルオープンと、メゾンドルミエールのグランドオープン初日。
ありがたいことに、数週間前からスタッフ総出でも足りないほどの見学予約が殺到していた。
「どうにもならなそうなところは、とりあえず俺に回して。プランナーか営業の誰かが空くまでは、俺が対応するから」
小野寺さんが、びっしりと埋まったスケジュール表を後ろから覗き込む。
私の肩に二の腕を預けて、「こことか……」とスケジュール表を指差す小野寺さん。
ちょ、ちょっと……
近い。近いよね……?
当たり前のようにさらりとスキンシップしてくるから、内心ヒヤヒヤ。
私も、あまり意識した反応をしないように気を付けてるけど……
っていうか、小野寺さんの方こそ気を付けてよ……!
ウチの職場は、社内恋愛がダメなわけじゃない。
だけどもし、私達が付き合ってることが知られたら、きっと大変なことになっちゃうよ…………。
最初のコメントを投稿しよう!