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――――――
「佐野ちゃん、なんか顔色悪くない? 大丈夫?」
教会外の円形階段でフラワーシャワーの花びらを掃き集めていたら、横から原田さんに顔を覗き込まれた。
「あ……、いえ、大丈夫です。ちょっと……寝不足なだけで」
私は慌てて笑顔を作る。
「かな、って思った。無理しないでね。今日は挙式少ないし、休める時に休んで」
「はい。ありがとうございます」
目の下のクマはメイクでばっちり隠したつもりだったんだけど……さすがは、気付きの天才・原田さん。
……って、気づかれてしまってるようじゃダメだ、私。
しっかりしないと。
「鳥飼くんも大丈夫かなぁ。珍しいよね、風邪なんて」
「そう……ですね」
鳥飼の名前が出て、一瞬胸の奥がドキリと音を立てる。
私はあくまで平静を装いながら、原田さんの話に相槌を打った。
『佐野チーフ、お客様から外線です』
『あ、はい! 今行きます』
インカム越しの声に返事をすると、手早く箒を片付けて、それから自分の頬を両手で軽く叩く。
きゅっと唇を引き結び、スタッフルームへと急いだ。
今は、仕事中。
目の前のやるべきことにきちんと集中しなければ。
曲がりなりにも、私はウェディングのプロなんだから。
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