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昨日、あれから。
私は結局、夜通し鳥飼に付き添ってしまった。
とはいえ看病なんて何をしたら良いかわからずに、とにかく思いついたことを片っ端からやることにした。
自分の部屋から冷却シートやたまたま冷蔵庫に入っていたゼリー、レトルトのお粥などを持ち込んで、アパートの下の自販機でイオン飲料のペットボトルを買って。
体力が回復したところで、鳥飼の身体を一息にベッドへ引き上げる。
やっぱりずっと濡れたままの格好で居させるわけにはいかないと、「これは看病だから」と意を決してYシャツとスラックスも脱がせた。
幸い室内干しされていた部屋着があったから、どうにかこうにかそれを着せる。
これだけされれば、普通なら目を覚ましそうなもの。
だけど鳥飼は、ずっと熱い息を吐き出しながら、一度も起きることはなかった。
「鳥飼……」
小さく呼び掛けても、返事はない。
こう言っては不謹慎だけど、鳥飼の意識がなくてある意味助かったかもしれない。
鳥飼を好きになっていた自分に気づいてしまった。
だけど、だからって、どうしたらいいの?
――『欲しくて堪らないんです、佐野さんのこと』
鳥飼のあの言葉を、今ごろ都合よく解釈してしまいそうになる。
今ここで目を覚まされたら、私は何を口走ってしまうかわからないから……。
高熱の鳥飼を一人にするのは気が引けたけど、担当の挙式が入っているから、私まで仕事を休むわけにはいかない。
自覚してしまったこの感情を持て余したまま、私は朝方になって、鳥飼の部屋をそっと後にした。
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