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鳥飼は、あの様子じゃいつ目を覚ますかわからない。
それに、とても自分から職場に欠勤の連絡をできる状態じゃない。
どうしようかと散々迷ったあげく、朝一番で、私から小野寺さんに伝えることにした。
“なんで佐野が知ってるんだ”、とか、
“あいつが自分で連絡してこないのはどうして”、とか。
想定されるありとあらゆる質問に対する返しを色々と頭に浮かべていたのに、当の小野寺さんから返ってきたのは、「そうか、わかった。あとで俺からも鳥飼に連絡入れとくから」とだけ。
「え、っと、聞かないん……ですか……?」
予想外の反応に拍子抜けして、思わず余計な言葉が口から零れてしまう。
「あっ、いや」
「聞かなくたって、何となくわかってる」
「え……」
「鳥飼から引っ越し先の住所聞いたとき、俺、なんか聞き覚えあると思ったんだよな。どっちにも言わなかったけど」
小野寺さんは切れ長の目を細めて、フッと口の端をあげた。
なんだ……小野寺さん、気づいてたのか。
というか……もしかしたらこの人は、他にもいろいろとお見通しなんじゃないか、という気がしてならない。
なんとなく居たたまれなくて、「じゃあ……」とその場を後にしようとした私を、小野寺さんは「あ、佐野」と呼び止めた。
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