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「三日、か……」
バックヤードの倉庫で引き出物のチェックをしながら、私は一人、ポツリと呟いた。
三日もあれば、きっと熱は下がるし、体力も少しは回復する。
小野寺さんの計らいにホッとする一方で、頭の中では複雑な感情がいくつも入り交じる。
あんなに辛そうにうなされていたのに、ずっと一人にしておいて大丈夫?
水分はとった? 何か食べられてる? 咳はひどくなってない……?
今すぐ駆けつけたいくらい、鳥飼の様子が気になって仕方ない自分と。
あいつの部屋に行くのが、あいつに会うのが……少し、怖いと思っている自分。
“好き”
だけど、多分これは、鳥飼の“欲しい”とは、違う感情。
全部さらけ出して、もしも拒絶されたら。
――俺が欲しいのは、佐野さんの身体だけですよ?
あぁ、すいません。勘違いさせちゃいましたか?――
もしも、そんな風に言われたら……。
とてもじゃないけど、立ち直れる気がしない。
私は、なんて臆病で小心者なんだろう。
いい歳して、自分で自分に呆れてしまう。
――『……っ、俺、の……っ』
切羽詰まったようなあの鳥飼の声が、頭から離れない。
俺の、ってそう言って、もっと触れて欲しい。
もっと、求めて欲しい。
もっともっと、深く、奥まで……私のことだけを。
でも……身体だけじゃ……嫌。
こんな風に思ったのは、鳥飼がはじめて。
明後日、月曜日は、8月27日。
私の誕生日だ。
――『27日の夜、空けといてね。俺が祝いたいから』
――『誕生日の夜は、俺にちょうだい』
だけど……それどころじゃなくなっちゃった。
それにあいつはこんな口約束、きっともう忘れてる。
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