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根掘り葉掘り聞きたがるプランナー達を適当にあしらってようやく帰宅した頃には、閉館から二時間も過ぎていた。
「あ~、なんかすげー疲れた……。俺らのどこにそんなに興味があるんだよ」
「あはは! だって“グランマリアージュ迎賓館の超人敏腕マネージャー・小野寺さん”は、皆の憧れだもん。こうなると思ってたよ」
「それを言うならお前だって……バンケと厨房のあいつらが明日ちゃんと出勤してくるか、俺は心配だね」
「え? 何のこと?」
リビングのドアを開きながら、キョトンとした顔で見上げてくる美沙緒。
人の事はよく見ていてよく気づくのに、自分の事となると途端に鈍感になる。
そーゆうとこ、相変わらずだよな。
まぁ……余計なことは口に出すべからず。
「いや、独り言」
俺はそんな美沙緒の頭を撫でて、仕事用の口紅が引かれた唇に軽くキスを落とした。
「ふふ」
「なんだよ」
「ううん。私もしたかったんだーと思って」
そう言いながら、美沙緒は俺の腰に腕を回してくる。
一緒に暮らしはじめて8ヶ月。
美沙緒は、どんどん甘え上手になる。
とはいえ半分くらいは無自覚だから、俺のほうはたまったもんじゃない。
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