episode 1. 愛しい人と、満たされた朝を

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こうやって小野寺(おのでら)さんの寝顔を見られるのは、結構貴重かもしれない。 最近は、早起きの小野寺さんに起こされることも多いから。 私も朝は弱くないはずなんだけど……。 寝心地の良いベッドで小野寺さんの香りに包まれて眠っていると、つい、いつまでもこの空間に居たい気持ちになってしまう。 私は、ここぞとばかりに小野寺さんの顔を眺める。 すると、鋭い視線を感じたのか、小野寺さんが「ん……」と小さく唸って薄目を開けた。 ぼんやりと私を視界に捉えて、それからちょっと眉間に皺を寄せる。 「……なんだよ、何見てんの」 あ……この寝起きの掠れ声、好き。 「ん……? 見てないよ」 「嘘つけ」 小野寺さんは、そう言うと大きく息を吐き出しながら私の身体を両腕で包み込んだ。 胸元にぐいっと引き寄せられる。 「……今何時?」 「5時45分」 私は、サイドテーブルの目覚めし時計に目線を送って答えた。 いつもより早いけど、目が覚めちゃったから起きて朝ご飯作ろうかな。 そう思って身体を起こそうとすると、不意に伸ばされた小野寺さんの腕に、あっさりと布団の中へ引き戻されてしまった。
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