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付き合ってからすぐに私が転勤になったから、それから一年、時々しか会えない時期が続いた。
休みが合うのは月に一度あるかないか。
お互いの家を行き来してはいたけど、会えてもまた数時間後にはそれぞれの生活に戻る、そんな一年間。
4月に私がグランマリアージュ迎賓館に戻ってきて、こうして一緒に住みはじめてからもう3ヶ月になるけど……
正直、毎日こんなに幸せでいいんだろうか、と思ってしまうほど。
相変わらず休みはあまり合わないけど、それでも家に帰れば小野寺さんに会える。
話せる、触れ合える、一緒のベッドで眠れる……。
それだけで、今の私はものすごく満たされてる。
「いただきます」
私に急かされて渋々着替えを済ませた小野寺さんは、きちんと手を合わせてから味噌汁の器に口をつけた。
うちの職場では、厨房で作ってくれる社員用の賄いは殆どが洋食だから、私は、基本的に朝ご飯には和食を作るようにしている。
仕事中は、お互いゆっくり賄いを食べる暇もないことが多い。最近は、特に。
だからせめて朝ご飯は、バランスのいい食事を二人で向かい合って食べたくて。
「あー……やべ、俺最近腹たるんでんな」
小野寺さんがぽつりとそう言って、私は思わずお茶で噎せそうになってしまった。
「えっ? どこが!? 全然たるんでなんかないよ」
脂肪の欠片もないような身体して、よく言う……!
それとも私への遠回しな嫌味だったりして?
「いーや、朝飯しっかり食うようになったからか、なんか身体が重い気がする」
次の休みはジムでも行くか……とぶつぶつ呟く小野寺さん。
そういえば、一人暮らしの頃は、朝はパンとコーヒーだけって言ってたもんね……。
きっと、小野寺さんはそこまで食べなくても平気なタイプ。なのに、私の作る朝ご飯を残すことは決してしない。
「量多いですか? 二人分の感覚がまだ掴みきれてなくて、つい作り過ぎちゃうんだけど……無理して食べないでいいからね」
「あー、違う違う。最近忙しくてあまり走りに行けてないし、それにお前の作る飯が旨いから、俺が食い過ぎるだけ」
小野寺さんは、残っていた卵焼きを口に放り込み、空になった皿を片手に立ち上がる。
「ごちそうさん。いつもサンキュ」
そう言うと、すれ違い様に私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
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