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片付けを済ませて、お互い身支度をする。
洗面台で手早く髪をセットする小野寺さんを横目に、私はピンクゴールドの小さなピアスを耳朶に通した。
小野寺さんから去年の誕生日に貰った、雫型のピアス。
仕事の時はお守りのように毎日つけているから、もう私の身体の一部みたいにしっくり馴染んでいる。
「用意出来た?」
「うん」
鏡越しに目を合わせて返事をすると、小野寺さんは腕時計に視線を落として「よし」と呟いた。
私もつられて自分の腕時計を見る。
いつもの出社時刻より、今日は50分も早い。
「……今日、一緒に乗ってくか?」
「えっ!?」
小野寺さんの予想外の誘いに、私は驚いて素っ頓狂な声を上げてしまった。
だって、職場にバレたら何かと面倒だからと、いつもは別々の車で出勤してるのに。
急にどうしたの? 小野寺さん……
私の表情に疑問符が浮かんでいたんだろう。
小野寺さんはフハッと笑って、
「別に、何となくだよ。一日くらいいいかなって。もし誰かに見られたら、美沙緒の車が調子が悪くて迎えに行ったとでも言っておけば」
と、車のキーを指でぶら下げて見せた。
「……そうですね。私ちょっとドキドキしてたから、小野寺さんと一緒だと心強いかも」
「ん。じゃあ、行きますか」
小野寺さん……もしかして、私が朝から少し緊張してるの、気づいてたのかな。
それでこうして一緒に行こうって、誘ってくれたのかもしれない。
私は誰も居ないエレベーターホールで、小野寺さんの腕にきゅっと抱きついた。
「なに?」
「ん……なんでもない!」
「なんだそりゃ」
「ふふ! 楽しみだなって」
「そーそー。お前は今日も、いつも通りそういう顔しとけばいーの」
小野寺さんは目を細めると、私の背中をポンと軽く叩いた。
うん。今日も、いつも通り。
だけど今日からは、昨日までとは違うワクワクとドキドキが待っている。
私達スタッフにとっても――
そして、これから挙式を迎えるお客様にとっても。
――7月の第3土曜日、大安。
今日はグランマリアージュ迎賓館の、
拡大リニューアルオープンの日!
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