episode 2. 新しい扉

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社員駐車場に小野寺さんが車を停める。 まだ朝早いからか、車は疎ら。 私はゆっくり助手席のドアを開けると、きょろきょろと周囲を窺った。 「誰もいねーって」 「いや……でも……」 「プッ、そうしてる方がよっぽど怪しいわ」 小野寺さんは可笑しそうに笑いながら、すたすたとグランの裏口の方へ歩いていってしまう。 「ま、待ってくださいよ」 私は小野寺さんの背中に声を投げ掛けて、それからふと、足を止めた。 朝日に照らされて並ぶ二つの建物。 目を細めながら見上げると、自然に顔が緩む。 やっぱり、改めて見ても…… うん。素敵! グランマリアージュ迎賓館と、その隣に新しく併設された別館。 ―――“メゾン・ド・ルミエール” 直訳するとフランス語で“光の家”という意味の別館は、クラシカルで落ち着いた雰囲気のグランとは対照的に、ガラス張りの解放感ある披露宴会場が売りの、まさに光溢れる邸宅。 一年振りにグランへ帰ってきたとき。 完成間際の館内を小野寺さんに案内してもらったときの感動は、数ヵ月経った今でも鮮明に記憶してる。 この感動を、今度は私がお客様に伝えなくちゃ。 ここで結婚式を挙げたら、どんなに幸せだろう。 どんなに楽しい披露宴になるだろう。 どんなに素敵な思い出になるだろう……。 お客様に、そうやって近い未来をたくさん思い描いていただけるように。 「原田! 何してんの」 私を“原田”と呼ぶ小野寺さんは、もうすでにお仕事モード。 「はーい! 今行きます!」 眩しいほどの白亜の邸宅を背に、私は足早に小野寺さんの後を追った。
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