短い夢をわらったの

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短い夢をわらったの

 大人になったら素敵な人と、胸がいっぱいになるような恋をするんだ。  少女の頃の私は、「風と共に去りぬ」と「高慢と偏見」を胸に抱いて、そう夢みてた。  だけどいじわるな現実は、私の幼い幻想を容赦なく打ち砕いた。  はじめて好きになった男は、モラトリアム真っ最中の大学生ドラマーで、私の告白の返事を曖昧にぼかして半ば強引に犯し、そうして都合よくあつかっただけではあきたらず、三股をかけていたのだ。  女の園で過ごしてきた世間知らずの私には、その衝撃たるや、筆舌に尽くしがたい。明日なんて来てほしくないと思った。だけど卒業式を休むわけにはいかなかった。  金網の向こうでは、マグノリアの花が蕾をゆるめている。  私こと藍田華乃(あいだかの)とせっちゃん、篠川(しのかわ)せせらぎは、抜けるような青空の下、高校生活最後の日を、校舎裏の非常階段で過ごしていた。  せっちゃんは、透明感のある美貌が凄みをあたえる眼差しで、私を見下ろしている。その蔑むような目は、私ではなく、私の口から語られているその三股男に向けられていた。     
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