猫とあなた

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猫とあなた

僕は九郎。 クロじゃなくてクロウだよ。 アメリカンショートヘアって猫ちゃんのメス。 メスなのに何で『僕』かって、あんまり意味はないんだけれどね。 僕はちょっと前までは飼い猫だった。 けど、家が嫌いになって家出してきたんだ。 今は立派な野良猫だ。 郊外のアミューズメントパークの駐車場が僕達の庭。 僕以外にも五匹の色んな野良が一緒に住んでいる。 僕はここが気に入っているんだ。 田んぼに面した駐車場。 自然があって川があって、日当たりも良い。 都会に居たい時は建物の陰や駐車場、自然に居たい時は田んぼ。 便利だから居心地が良いったらありゃしない。 今日は冬だけど日差しが暖かい。 のんびりと駐車場を横切っていると、ニンゲンが近付いてくるのが見えた。 真っ直ぐ僕の方に向かってくる。 アミューズメントパークで映画を見たのかな、片手にパンフレットを持った男の人だった。 そいつは優しい笑顔でこっちに来る。 たまにいるんだよね、野良の僕等に馴れ馴れしく寄ってくる奴が。 僕はニンゲンが嫌いだ。 だから家出して野良になったんだ。 僕はニンゲンより早い足取りで田んぼに逃げ込んだ。 小川を軽く飛び越えて、ざまあみろと振り返る。 ニンゲンはまだこちらを見ていた。     
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