第1章「音の花」
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第1章「音の花」

「ったく、リチャードのヤツ、人使い荒いよな!」 芥子色からしいろの粗末な襦?じゅこに藍色のボサボサの髪を無造作に束ねた 花蜘蛛はなぐもは、彼が女装したのかと見間違うほどよく似た、双子の姉の夜蝶やちょうに向かって、ボソボソと聴き取りにくい声で呟いた。 「仕方ねえだろ! いつもいつもグチグチ文句ばかり言いやがって! 決戦のときまで、あと1年しかねえんだ! 失敗は許されねえ! 些細な情報が、“Dr.ハート”をぶっ潰すための鍵になるかもしれねえんだ! 気を引き締めやがれ!」 並の男よりよっぽど漢気溢れるオーラを醸し出す姉の夜蝶は、口を開かなければかなりの美人だ。弟の花蜘蛛と同じ藍色の髪を腰まで垂らし、天鵞絨びろうど色の光沢のある太ももあたりまで深くスリットの入ったチャイナドレスに身を包み、膝上まであるゴツい編み上げの黒のロングブーツを履いている。よく見ると、そのブーツは傷だらけのボロボロで、2人が、安穏とした日々とはかけ離れた特殊な状況下に置かれていることは一目瞭然だった。