第2章「朧月夜」
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第2章「朧月夜」

夜蝶と花蜘蛛が“音の花”に宿泊して3日。 “ペンション 音の花”のことが少しずつわかってきた。 オーナーである、紫月響花しづききょうか紫月律花しづきりつかは実の母子で律花が16歳の時に父・弦也げんやが不治の病のため他界した。紫月家は、母の響花がオペラ歌手、故・父 弦也はヴァイオリニストであり、幼少期から音楽に慣れ親しんで育った律花は、特にピアノの類い希なる才能に恵まれ、“神童”と呼ばれ、ここ“月夜見之國”においてはちょっとした有名人だったらしい。 律花が16歳の時に、“月夜見之國”の代表として、西国の音楽の都として有名な“ウィンストン王国”の王立音楽院に音楽留学することが決まっていたのだが、出発間近に病床に伏していた、父・弦也の容態が急変し逝去したために、律花は留学を断念。代わりに彼女の親友が王立音楽院に留学したとのことだ。 *** 「この国の人たちは、案外音楽に対する関心が高いんだな!」 興奮冷めやらぬ様子の夜蝶が言った。 路上ライヴで日銭を稼ぎながら生計を立てている夜蝶と花蜘蛛は、“雫エリア”でのライヴで連日大盛況を収め、上機嫌だった。