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「あっ、思い出しました。薔薇の花言葉は滅亡です。間違いありません」
予想を超えた危険な花言葉が出てきた。『滅亡』は睡蓮の花言葉だ。
「それで、松本さんは誰を滅亡させたいんですか?」
そのセリフ、怖すぎやしないか? そもそも、滅亡させたいやつなどいるはずが無い。それどころか、このまま話が進めば彼女に滅亡して欲しいと伝えることになる。
「水希さん、落ち着きましょう。バラの花言葉は本数によって変わ……」
「私は間違っていません」
不機嫌そうに頬を膨らまし、横を向いてしまった。その仕草と表情は抱きしめたくなるほど可愛いのだが、そんな事を考えている場合ではない。
なんとか機嫌を直してもらおうと、別の話題で場を和ませる。
ようやく笑顔を見せてくれた頃には、プロポーズする雰囲気は消え去っていた。そして、私も気力を失っていた。
出直そう。そう思って代金を支払い、100本の薔薇の花束を抱える。
「ありがとうございました。これはサービスです。私の気持ちを受け取って下さい」
そう言われ、さらに15本の薔薇の花束を渡された。
一度は冷めた感情が再び熱を帯びる。
薔薇15本の花言葉は記憶に無かった。
もしかしたら、彼女も私のことを好きなのか……そんな期待をして近くの公園に飛び込み、スマートフォンで薔薇15本の花言葉を検索する。
そして、夜空を見つめた。
「そうか……鈍感で天然なのは……私なのだな……」
薔薇15本の花言葉は『ごめんなさい』だった。
【完】
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