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あれから2週間。 珍しく、龍ヶ崎は1度もカフェに顔を出すこと無く、「おはよう」や「おやすみ」のラインさえ1度足りとも寄越してくることはなかった。 龍ヶ崎を本気で、“好き”になる前で本当に、本当に良かった…… そう自身に言い聞かせながら、いつも通りの生活を送っていた。 だが、相変わらず龍ヶ崎が主演の禁断の学園ラブストーリーは毎回欠かさず観ており、相手役の結花莉へ無意識の内に感情移入しては、その切なさに毎回涙していた。 結花莉は、女性だし卒業さえ待てば不知火とはどうとでも一緒になれる。 だけど、俺は? ……俺は、この先龍ヶ崎の想いを受け止めた後、一体どうなるんだ? 龍ヶ崎は、今をときめく人気ハリウッド俳優だ。 いくらでも恋する相手には困らない。 だからこそ、どこにでもいるような平凡で金も無いただの大学生である俺は、この男が欲するような……この男の隣りにいられるような魅力的な人間じゃないことくらい誰よりも自分が痛い程理解している。 そんなことを考えつつ、ずっと避けていたはずのロケ現場の前を無意識に通過しようとしてしまう。 相変わらず、ロケ現場には大勢の人集りが出来ており、そのお陰で龍ヶ崎を直視しなくて済むことに俺はひどく安堵した。
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