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「悪かったよ、颯斗!でもさ、今期1番人気の龍ヶ崎翔琉の主演ドラマのロケが俺たちの大学であるんだよ?
それを、生で観ないでどうするんだよ!!しかも、相手役は“みんなの妹”と呼ばれる旬のアイドル、“ゆかりん”だよ?
颯斗、お前高校時代から芸能系にかなり疎いヤツだとは思っていたけど、本当に無知だなぁ……」
176cmある俺より少しだけ背の低い、大学生にはとても見えない目が大きく愛らしい顔の赤羽は、呆れた表情で大きな溜息を付く。
「ンなことは、ねぇよ。俺だって、その……ドラマ……一応観てるよ」
龍ヶ崎様が主役だから……
そう、赤羽には言えないが。
出演するドラマ全てが視聴率30%以上を毎回叩き出す視聴率男にして、ハリウッド俳優である龍ヶ崎翔琉。
ヤツは、俺が高校時代からバイトしている六本木にある一流の者のみが出入りできる高級カフェの常連である。
俺は、この男が行き倒れていたのを助けたことがきっかけで“鶴の恩返し”ならぬ“龍ヶ崎の恩返し”計画の為、つい数ヵ月前まで一方的に捜され、その後は執拗に追い掛けられていたのだった。
そして、俺の誕生日であるバレンタインデーをきっかけに告白され、ホワイトデーには名前で呼ぶよう強要された。未だに、龍ヶ崎との会話は馴れないし、心の何処かでまだ彼からの想いを信じ切れない自分がいる。
人気ハリウッド俳優と一介の平凡な大学生。
しかも、同じ男。
そんな凄い男が、助けてもらっただけで本当に俺を好きになって、その想いがずっと持続するものなのだろうか。
そんな疑問が常に付いて回り、積極的に自分の気持ちが先へ進めないままだ。
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