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「赤羽、もう本当にバイトの時間だから……」 俺がそう言うのとほぼ同時に、龍ヶ崎は自身目当てがほとんどの大勢のギャラリーがいる方へと歩き出した。 「あ、翔琉がこっちへ来るよ! 写真くらい撮って貰えるかな?」 熱狂的なファンが龍ヶ崎を取り囲み、揉みくちゃにされながらも赤羽はウキウキした表情で、俺へと話し掛ける。 龍ヶ崎は、沢山のファンたちから握手やサイン、写真のツーショットを激しく求められるも、その全てを無視し人集りの奥まで突き進んでいく。 その様子に、何故だか嫌な予感しかしない俺は、龍ヶ崎へと顔を合わせないよう、さり気なく背を向け逃げるようにその場から立ち去ろうとする。 だが、赤羽によって腕を捕まれその行動を阻止されてしまう。 「おい、ここまで翔琉が来てるんだから最後まで付き合えよ。 ……あ! 翔琉!! 1枚一緒に写真撮ってくれー!!」 赤羽は俺へと耳打ちをすると、すぐ傍まで来た龍ヶ崎の視界に入るように興奮気味で身を乗り出し、携帯電話を握り締めた手を必死に振り、大声で叫んだ。 「……そこの(、、、)()は、ツーショットの写真は撮らなくて良いのかな?」 人混みを掻き分けてまで、赤羽のすぐ目の前まで近付いてきた龍ヶ崎に、思わず他人のフリをしてしまう。 当然だが、周囲の視線が俺の背中へと突き刺さる。 ……赤羽が、大きな声で話すから絶対に気付かれたんだよ! 俺と龍ヶ崎様は、何の関係も無いんだってばー!! 「颯斗?」 隣りにいる赤羽すら、驚いた表情で俺の名前を呼ぶ。 益々突き刺さる周囲からの視線に、心の中で赤羽を恨みながらそのまま知らないフリをし、赤羽の手を力任せに振り切って足早に立ち去ったのだった。
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