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リビングの壁面は、家族の思い出の写真が飾られている。当たり前だがどの写真も全員男。きっとよそのほとんどの家族写真は男女混合なのだろう。
「よその家と比べたら、ウチだけが何か変だと思ったかなあ……」
「俺、もしかして怖がられてる? お父さんの目つきが怖いって言われたら可哀想だからって、サングラスをかけてお迎えに行ったのが逆効果だったのかなあ」
「どう見ても成人男性の形なのに、産んだ意地で『お母さん』って呼ばせていたのがいけなかったのかなあ」
はあああああ。湿ったため息がこぼれる。
子供の口から拒絶の言葉が出た訳ではない。今日のところは単純に疑問がたくさん生まれ、遠慮なく聞いてきただけ。いつもと同じ、大好きなお父さんお母さんに甘えるだけ甘えて、遊び疲れて眠った。それだけ。何も変わらない。
よそはよそ。ウチはウチ。解っているのに。男ふたり親なんてオカシイと思われるのは嫌で、引け目を感じて気弱になる。
「ま、とりあえず飲も?」
「あれ、酒飲む? 珍しい……」
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