鎌鼬

19/19
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「なぜ──あなたが……」  鎌鼬──。  そう呼ぼうとする時子の言葉を、迎えに来た男はすっと手を伸ばして制する。 「おまえの百個目の願いを叶えに来た。迎えに来たぞ」  時子の頬を流れ落ちる雫を、大きな手ですくい取ってから、男は時子の手を引く── 「さぁ俺の国に行こうか、時子。今度は百なんてケチなことは言わねぇ、いくらでも叶えてやる。おまえの願いを──」  男の声に、時子は大きくうなずいて、にっこりと嬉しそうに微笑んだ。 「あの、もう一度、名前を呼んでくれませんか? これが、私の百一個目のお願いです」  時子の言葉に、男は嬉しそうに顔をほころばせて―― 「何度だって呼んでやるよ、幸せにしてやる、時子――」 【終】
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!