それはありえないようであった話

2/5
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
幾年か前。 保育士の大量退職があった。 しかもそれは前触れもなかったそうだ。 ――いや、実際は「給料が少ないのでなんとかしてください」という苦情が何度もあったそうなのだが、園長がのらりくらりとかわし続けたため、保育士たちが結託したそうだ。 大人数を受け入れていた保育園はパニックになった。 何しろ、年度末ではなく、1年の終わりの12月にそれが発覚したからだ。 発覚した、というのは年始について連絡する際に誰とも連絡がつかなかったからだ。 園長は焦った。 このままでは年始の保育園はパニックになることは必須。 とにかく自分の体裁が悪くなるのだけは避けたい園長は緊急保護者会を開き、「保育士がボイコットした」と自分の悪い部分は一切言わずに速やかな転園を進めた。 保護者達は実は保育士から手紙を貰いある程度は知っていたのだが、まさか年度末ではなく年末に退職とは思っていなかったので阿鼻叫喚並のパニックに陥った。 なので、園長の指示に従うしかなかった。 何より、子どもの預け先がなければ仕事に行けないのだから。 とりあえず、近所に小規模保育園が多いことから0・1・2歳の乳児の預け先は何とかなった。 問題なのは、3歳から5歳の子どもたちだった。 幼稚園はあるのだが、保育園のように預かってくれないので親が働けない。 預かってくれそうな保育園は春から新しく出来る保育園が可能なのだが、それまで3カ月の預け先がどうしてもない。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!