それはありえないようであった話

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結果。 ボイコットの時期に途中入社してきた保育士、(もも)に白羽の矢がたった。 「3歳児29人、4歳児31人、5歳児40人。合計100人の子どもの保育を3カ月だけやっていただけないだろうか!」 保育園として成り立たないところにいても仕方がないとさっさと転職する旨を告げに来た(もも)に園長は渾身の土下座をした。 とはいえ、月の手取りが13万という安月給でそんな重労働をする気力など到底起こらない(もも)は勿論断った。 というより、そもそも物理的に不可能。 全力で拒否をした。 だが、ここで園長は卑怯な言葉を吐いた。 「100人の子どもだけじゃない、その倍の数の親まで困ることになるんだ。君に少しでも良心があるならどうか、どうかやってくれないか!」 園長は必死に懇願した。 それに対し(もも)は「なら園長が見てあげればいいじゃないですか」と返したがそれには「私は保育士資格を持っていないから無理だ」ときっぱり返された。 (もも)は悩んだ。 実際、子どもや親たちが心配なのは事実だった。 このままボイコットをした保育士たちと同じように自分もさっさと去りたかったが、どうしてもそうする気にはなれなかった。 母子家庭で育った彼女は、母の苦労する姿を知っているからこそ、放っておけなかった。
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