それはありえないようであった話

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「なら、辞めた保育士5人分の給料を出してください。100人という人数は本来なら5人はいりますし、もし彼女たちがボイコットしなければ出していた給料だからできますよね?」 手取月13×5で65万。 その手取ならかなりの高収入になるしまだやる気が出る。 とはいえ、給料を上げてほしいという願いを聞かなかった園長だ。 恐らく金惜しさで断るだろう。 そう思ったのだが、園長は顔を輝かせ「払ったらやってくれるのだな!?」とまさかの了承だった。 けれどその了承があまりにもあっさりしすぎていて(もも)は逆に怪しんだ。 もしかして、この人保育の辛さを何もわかっていないのではないだろうか? 金で全て解決する。 もしかしたら、そう思っているのかもしれない。 (もも)は考えた。 そして、ふと「……あの、保育に使う経費は勿論全部出してくれるんですよね?」と尋ねた。 (もも)が前に勤めていたブラック保育園ではサービス残業は当たり前で保育に必要な経費を請求したら全て出し渋るという園長だったのだ。 そんな辛い所で3年勤めたお陰で彼女は「どこの保育園でも耐えられるよ」と先輩方にお墨付きをもらっていた。 寿退社でブラック保育園を退職した彼女は身の回りが落ち着いたのでまた働くべく近所の保育園に訪れたのだが、まさかの地雷だったなとかなり後悔していた。 「そりゃあ……勿論!」 答えるのに、少し間があった。 これは、後から有耶無耶にして払わないタイプだ。 「……少し、返事を待ってください。明日また来ます」 (もも)はそう答え、覚悟を決めた。 3か月。 園長のためではなく、こんな駄目な園長により不幸になってしまう子どもたちを救おうと。
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