それはありえないようであった話

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(もも)は帰ると色んな友人に片っ端から電話した。 保育園のある町は小さいが田舎ではなく、交通便がとてもいい。 さらに治安もよく大きな公園があるので違う町から預けに来る親も多い。 ただ、小さい町である分、町の中の結託力が高い。 昔住んでいた分、(もも)はそのことを良く知っている。 だからこそ、この町にある施設には殆ど友人がいる。 同じ町で働くのが嫌で外の保育園に行き失敗したからこそ、今度は今の住まいからそう遠くない地元で働こうと思ったのだが、失敗だったなぁ、と思いながら快く電話に出てくれる友人たちといろんな話をしながら近況を聞く。 市役所、銀行、新聞配達、広告関係…… 昔仲が良かった分、皆「会社のことならまだしも町の状況ぐらいなら」と教えてくれた。 そこで、わかったこと。 この町はとても外面がいい。 その外面を保つために印象が悪くなることは片っ端からもみ消している。 理由は単純に金が入るから。 その中でも一番よかったのが今パニックに陥っている保育園。 でも今回のことでその保育園は今年度末で潰し新しい保育園として生まれ変わることにしている。 外にはそう公表するがボイコットはイメージが悪いので隠す。 幸い親たちは忙しいからそんなことをどこかに公表するなどの暇はないから身内さえ防げば平気。 といったような、なんとも自分勝手すぎる理由がボロボロと出てきた。 そして思っていた通り、「あそこの園長は金の亡者」とどの友人も口を揃えて言った。 一連の話を聞き園長がやはりよろしくない人物だと改めて知った(もも)は。 「……よし」 気合を入れ直し、再び電話をつなげた。 それは、とても心強い味方になる人物。 「もしもし、(もも)です。頼みたいことがあって――」 (もも)は決めた。 一人で子どもを見る。 けれどそのかわり。 園長をとことん苦しめてやる。
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