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保育場所に大きな体育館を選んだのは親が預けるのに交通便が楽なのと、玄関から保育をするコートまで一方通行で受け入れやすいこと。
そして、何より。
おもちゃを広げて子どもが思いっきり遊べることだ。
「全員集合ー!」
登園した順番に玩具で遊んでいた子どもたちが百の傍に集まった。
広い場所だからこそ使えるスピーカーは百の声を10倍ほど上げて子どもに届けてくれ、子どもたちは普段聞きなれない大きな音だからこそ従ってくれる。
「まずは一旦トイレ! 3歳から順番に行きます! 5歳の女の子は付き添って手伝ってあげてください。後の子はトイレの順番待ち! 終った子から座って待つように!」
5歳といえど、女の子はしっかり者が多い。
人形遊びが好きなように、世話好きな子が多い。
年下の子を見てもらうとなると、お姉さんとしての意識をいつも以上に発揮していい働きをしてくれる。
小さな保育士さん、とも呼べる存在だ。
だが男の子は一人暴れん坊がいたら皆それにつられてしまう。
故に、女の子は基本放置、だけど男の子は徹底マークという保育を百は行った。
押し合いへし合いの危険行動があれば耳が痛むようなキーンというスピーカーの音を鳴らしたり笛を鳴らしたりして収め、一番厄介な保育時間へと移る。
体育館は大体バスケットコート4つ分だった。
そして2階に観客席がある。
2階の階段への扉は鍵が閉められるので完全に締め、コートへ入れる扉は中央の入口のみ開けてある状態だ。
他の入口の扉は子どもが開けないよう通常の手の届く鍵、下の鍵、子どもには届かない上の鍵、と三重にかけてある。
よって、外から入る玄関からそのままコートへ入る以外はどこにも行けないようにしてある。
一階の廊下は広いが、他へ行かないようシャッターを下ろしてもらっている。
体育館内のコートを区切るためのしきり網は端によけ大人でも普通には届かない位置に収納している。
後危険な場所と言えば、体育館内で使える道具室だ。
だが、扉を開けると鉄棒らしき棒からとてつもなく怖い般若のお面が無数にぶら下がっていて、大人でもビクっとなるほどな場所なので早々入らなかった。
実際何名かのいたずらっ子が泣いて逃げた。
安全面はほぼ完ぺきと言えた。
計画保育に百は大きなブロックを子どもたちの目の前に掲げた。
「うわーおっきい」
「すごーい」
子どもたちから感嘆の声が上がる。
いつも使う小さなブロックとは違う、両手で持たないと運べないほどの大きさだ。
百はこれを500個用意してもらった。
「500個!? そんなにいるか? 1人1個でいいだろう!」
そう叫んだ園長に誓約書をひらひらさせながら用意させた。
1人1個とか、アホか。
どうやって遊べというんだ。
本当は1人5個計算でも足りないくらいだ。
でもそれを何とかするのが、今の私の仕事だ。
百はブロックを手に子どもの集中を集めながら、布で隠していたブロックを登場させた。
たくさんのブロックに子どもたちの嬉しそうな歓声が上がる。
折角、たくさんの友達と遊べるんだ。
折角、広い場所があるんだ。
有効活用して、思いっきり遊ばないと、損だ。
まずはチームを2つに分け、ブロックを陣地に集めることから始める。
人数分の段ボールの荷車を渡す。
これは保育園に元からあったものだ。
子どもたちが遊ぶようにそれぞれの部屋にあるのをかき集めたら数が足りたので助かった。
本来は子どもが1人乗り、それを保育士か、もしくは他の子どもが引っ張って遊ぶもの。
今回はそれを荷車として活用した。
丁度、大きなブロックが余裕で1つ入るぐらいだ。
跳び箱の一番上の段を出来るだけ離れて置く。
それを陣地とし、チームは3歳と5歳チーム。
4歳チームというチーム分けをした。
厄介な3歳に対しお兄ちゃんお姉ちゃんの存在はとてもありがたい。
喧嘩やいざこざが起こるのをかなり防げる。
4歳だけにすれば、仲間意識が高まるし、万が一喧嘩が起きがても百が傍に居る。
3歳と5歳は横目で気を配りながらで何とかなる。
「さぁ、頑張って集めてね! 集めたら大きいお城を作りましょう。では、よーい……どん!」
百の笛の音と共に、ブロック集めが始まった。
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