100人の保育

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保育は予想通り動いてくれた。 たくさんのブロックを集めるのは大変で、それを陣地の周りに集めるだけで午前は終わった。 急ぎすぎてこけてしまいブロックの中に突っ込んだ子もいたが、頭に当たっても痛くない柔らかめのブロックだったおかげで怪我もなかった。 お昼を食べてから城を作ることにし、それぞれレジャーシートを広げお弁当を並べる。 体育館には給食を作る場所なんてない。 かといって、運ぶとなるとそれもまた大変。 だから、お弁当作りを保護者にお願いした。 別にコンビニで買ったものや、パンだけでもいい。 栄養を考えてない適当なものでも文句は言わない。 それに気を配るほどの余裕がない。 それに、そうした方がアレルギーを持っている子どもへの対応がいくらか楽になる。 レジャーシートに関してもそうだ。 机やいすを運ぶ作業が大変すぎる。 後片付けを子どもが手伝ってくれたとしても、(もも)の負担が大きい。 その後の床の掃除というものまで手を回せない。 だから遠足気分でそれぞれレジャーシートを広げ、持ってきたおしぼりで手を拭き、みんなでいただきますをする。 忘れた子がいても、仲良し同士で座るからおしぼりを貸してあげたりできる。 ご飯の交換は禁止しているし、何でもいいから絶対持たせるようお願いしたおかげでお弁当を忘れていない。 バナナだけの子がいたが、足りなかったら(もも)が多めに握ったおにぎりを渡すことにしている。 わいわいと子どもたちはとても楽しそうだった。 午前にたっぷり遊んで、お友達とお弁当を食べて。 午後にまたたくさん遊ぶ。 眠くなった子は3・4歳の人数分、端の方に布団を並べそこだけしきり網を引いて寝ることにしている。 眠くない子は寝なくていいことにした。 気を配って注意するのは、(もも)の精神の負担にもなるし大変すぎた。 だから保育のコンセプトは、自由、だ。 おにぎりを頬張り、子どもたちへの様子に目を配りながら玄関の掲示板に掲げる文章を素早く書いていく。 1人1人の保育日誌なんて、書いてる時間も余裕もない。 親たちにも、様子は掲示板のみであとは子どもたちに聞くようお願いしている。 理解ある親たちばかりで助かった。 むしろ、すみませんお願いします、と何度も頭を下げてくれる親の方が多い。 掲示板を書き終えた(もも)は一息つく。 お昼の時間は、比較的穏やかにすみそうだ。 でも、こんな日を3か月繰り返さなければならない。 正直、一日の午前中でここまでどっと心身に疲れが来るほどなので、月65万の給料でも割に合わない。 でも、やらなきゃいけない。 (もも)は決意を新たにした。 100人の子どもと、その親を。 私が、守るんだ。
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