2019/4/5 挨拶口上

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2019/4/5 挨拶口上

「先般は意図せぬ『出会い』の機会、止む無く遭遇してしまう怪異をお話しましたが、今回は積極的に怪異を呼び込む催しのお話にございます。  百物語と言えばご存知の方も多いでしょう。  …ええ、江戸時代に町民の間で流行った夏の催しです。数人で集まって順番に怪談話をし、背筋の凍る恐ろしい思いをすることで暑さを忘れようというのですな。  実は、この催しには幾つもの作法がありまして、その一つに(さく)の日(太陰暦の一日(ついたち)、即ち新月)に開催するという作法がございます。  そう、今宵は百物語におあつらえ向きの日よr…、  ……は?その先は言うな?…それは一体どういうことで?  え?…白々しい?一石二鳥狙いはセコイ?……ま、まさかぁ、そんな下心ありませんって!  ……コホン。  気を取り直し、本題に参りましょうか。  この度の催しは、この春の新生活に一歩踏み出した新入生・新社会人への(はなむけ)に、1785年に平秩(へづつ)東作(とうさく)によって編まれた『狂歌百鬼夜狂(ひゃっきやきょう)』に因んだ落語百物語を贈ろうという試みにございます。  何故かと申しますと、大きく環境が変わって右も左も分からぬこの時期、世間に百鬼夜行の影を見て不安となって心を磨り減らし、体調を崩してしまう人が少なくないのです。  長い努力と忍耐を重ね、晴れてサクラ咲いたというのに実に残念なことです。  そんな不遇に陥らぬよう、かの狂歌の様に諧謔(かいぎゃく)で疑心暗鬼を()い飛ばす……、冷たく突き放すような叱咤の声に心疲れ、聞こえぬよう耳に入れた(Digit)を、「This is it !」という激励の声に変えようという趣向なのです。  この落語百物語が見事に綴じられたそのときは、(ねぎら)いの拍手を頂きたく存じます」
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