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狼のあり方
誠実で生真面目な、祖国と人民に尽くした男。
ユーリ・セルゲイノフの葬儀はしめやかに、彼の故郷にて行われた。
身寄りはなかったが、軍時代の友人や部下達が有志となって執り行った。
参列者もほとんどが軍人だった頃の関係者ばかりと言うこともあり、俯く者や肩を震わせる者はあれど、両親の隣に埋められて行く彼の棺を見ても涙を流す者はいなかった。
ただ、凶刃によって奪われた命に対する怒りや悔やみ、悲しみが確かにそこには溢れていた。
葬儀は終わり、参列者達はそぞろに歩き出す。時代も地域も関係ない。これから彼らは死者を悼んで昔話に花を咲かせるのだ。
まだ寒さの残るモスクワ北部の市街地を、東洋系の青年が足早に進んで行く。
道行く人が気付かぬ程、呼吸する様に周辺に気を配りながら、誰とも肩をぶつけずに抜けていく姿は、まさに野生の獣だ。
服の上からでも察せられる鍛えられた肉体は軍人のようだが、彼は違う。
彼は、殺し屋である。
ギルドとでも呼ぶべき組織に属し、狼の名を受けた正真正銘の殺し屋なのだ。
本来は追いかけ追い詰め、命を狩りとる立場の彼が今は追われる身となっていた。
狼を追いかけるは猟犬。
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